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こないだ降ってきたネタの続きー!
雑→伊→高、のやつです。
雑渡さんは伊作のことが好き。むしろ好き過ぎて手が出せない感じ。
遠くから見守ったり、医務室に訪ねてよもやま話をするくらいしか出来ない。だから伊作も、好かれてる印象はあっても、そんなに想われてるとは気づいてない。
もちろん雑渡さんは伊作が高坂さんのこと好きなのを、知ってる訳ですよ。
嫉妬みたいな気持ちも無くはないけど、昔馴染みだし、自分より伊作と年齢が近いし、怪我を負った自分と違ってイケメンだし、そして、高坂自身が気づいてなくても、高坂さんが伊作のことを好いているということも分かってる。つまり自分より伊作に相応しいような気もして、なんとも言いようがない。また、いざとなれば高坂は伊作より自分を取るんじゃないかということも薄々分かっていて、余計なんとも言いようがない。見守るしかない。
で、まあ、そうこうしているうちに、伊作の卒業が近づいてくる訳ですよ。
それで、奥手だった雑渡さんも言ってみるわけです。
「うちで働かない?」と。
軽く世間話みたいに誘ってみる訳だけど、さすがに目が真剣だったりする。
そこで伊作も気づく訳です。雑渡さんは自分のことが好きなんだと。
最初はちょっと「これで高坂さんと一緒にいられる♪」みたいなことも考えた伊作ですが、雑渡さんの気持ちがこうであれば、受けるわけにもいかないと思い、断る。
が、伊作が断ったことで焦ったのは高坂さんですね。
雑渡さんがどれだけ伊作のことを好きか知ってる身としては、これはもうどうしても、伊作をタソガレドキに連れてきたい。内心、同僚としては使えない奴だと思ってても、そこは組頭のため。高坂さんは伊作に直に話をしに行く。
ちょうど満開の桜で、風が吹いたらはらはらと花弁がこぼれるくらいの時期がいいなあ。
花の下で、高坂さんが問いかける訳です。
「なぜ、断った?」
「なぜって、僕がタソガレドキでやっていけるとお考えですか? 僕の実力の程は高坂さんもよくご存知でしょう。みなさんの足を引っ張るだけですよ」
「しかし、君には医術がある。きっと組頭の役に立ってくれるはずだ」
「そうだとしても……僕に、城勤めは無理ですよ」
「そんなことはない」
「ありますよ」
いつになく強情な伊作に、高坂さんは腹をくくり、覆面を下した。
初めて真正面から見る高坂の素顔に、伊作がはっと息を飲む。
信じられないというように瞬きを繰り返す伊作に向けて、高坂は頭を下げた。
「伊作さん。どうか、タソガレドキに来て下さい」
高坂さんに素顔を見せてもらえた山田先生に憧れている、以前、そんなことを言っていた。手練れの忍びに認められるような、一人前の忍びになりたいのだと。
この子がくればきっと組頭は喜ぶ。そのためなら、素顔を晒すことも頭を下げることも、出来ないことではなかった。
「高坂さん……」
嬉しい、はずだった。憧れてたはずだ。こんなに優秀な忍者に、顔を見せてもらえたのだから。しかも夢にまで見た、大好きな、高坂さんに。
でも、それはあくまでも雑渡さんのため。自分を認めてもらったわけじゃない。伊作の胸が痛んだ。
「伊作さん。……お願いします」
顔を上げた高坂の、真剣な目を見て伊作は気づいた。
高坂さんは、僕のことが好きなんだ。
憎からぬ気持ちで思ってくれている。
でも、高坂さんはきっと、その気持ちを封印する。雑渡さんのため。
雑渡さんが僕のことを好きだから、横からかっさらうような真似は決してするまい。
いっそ嫌われてるんなら良かったのに。
使えない、役立たずのガキがと思われてるんなら良かったのに。
この人は、僕のことが好きでいながら、決して、その思いを遂げようとはしないのだ。
雑渡さんのために。
恋なんかより大事な、忠誠を誓った、主君のために。
「高坂さん」
伊作は精一杯笑みを作って、高坂の素顔を見上げた。
「僕、高坂さんのことが好きです」
告げた途端、涙があふれた。顔は笑みの形を保ったまま、両目からとめどなくこぼれる涙に、高坂は焦った。
「い、伊作くん?」
「好き、です。ずっと前から。……だから、タソガレドキには行けません」
言い切ると、うつむいた。その姿は華奢で儚げで脆そうで、誰かが支えなければ崩れてしまいそうだった。高坂は手を伸ばそうとした。しかし、その手は伊作に触れる寸前で、止まった。
この手が触れたら。きっと、抱きしめてしまう。
抱きしめたら。きっと、手に入れずにはいられなくなる。
……駄目だ、この子は組頭の思い人。俺が手を触れてはいけない……!
ならばせめて何か、言葉をかけようと思った。そうか、とか何か、伊作の意を了承した言葉を。
そうでなければ、じゃあ、とか、さよなら、とか、この場から立ち去る挨拶を、しようと思った。
しかし何を言えばよいやら。こんなに頼りなく泣き続ける伊作を支えることもできないのに、声をかける資格などあるわけがない。
そう思って、高坂は立ち去った。手練れの忍びらしく、どの方向へ去ったかも悟らせぬくらい、鮮やかに。
「こう、さか、さん……」
泣き続ける目では何も見えない。でも、気配が消えたことは分かった。確かめるべく乱暴にまなじりをぬぐって目を開ければ、風が吹いて、ちらほらと舞い落ちる花弁ばかり。
伊作はその場に膝をついた。そのまま腰を下ろして、膝を抱えて、ずっとずっと泣き続けた。
……みたいな。
なんかここまで出来てるんだったら、ちゃんと話にして書け! って気もしますけど(^^;;
なかなかね。うまくいかないというかなんというか。
ちなみに、泣きぬれて終わるアンハッピーエンドではありますが、きっと同室の誰かとか同級生のみんながちゃんと助けて、慰めてくれます。失恋の痛手から完全に立ち直るのは難しくても、ちゃんと自分には支えてくれる仲間がいるんだということは、伊作を癒してくれると思いますよ。
はああ。やっぱ妄想を吐き出すのは、大変ですけど楽しいですな^^;;