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日常のこと、アニメ感想、ネタなど。
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今さっきカウンタみたら、「40139」だった!
やっぱ伊作好きとしては、139が出るとキリ番な気分ですね。
「よぉ、伊作!」ってな感じでしょうかvv

それはともかく。
 
2009年とか2010年とか(そんな前だったのか、と、調べてて驚いた><;;)に書いてた、現パロのクリスマスネタの続きというかスピンオフというかなんというか……まあ、ネタです。
伊作は不運だけど、周りの人たちに恵まれて、愛されてるよね!というお話。
下の方に小さく出る「追記」からご覧下さい。
 
話が分かり辛くてすみません!
裏話を後日また書きますね。
 
前のクリスマス話は、「ネタ」カテゴリに入れてあります。右側の下の方にカテゴリが出てくるので、もしよかったら、そこからご覧下さい。

今月の6日と13・14日に拍手下さった方、ありがとうございました!




 角を曲がれば、少し先に見知った背中があった。
 いつもはそれなりに背筋の伸びたすっきりした背中だが、今日は違う。力なく丸まって、進む足取りにも元気が無い。仙蔵は足を速めると、前を行く背中に追いついた。
「あれ、仙蔵」
 あと数歩、というところで相手は振り返り、驚いたように目を丸めた。
「どしたの、こんな時間に。今、帰り?」
「本屋に寄っていたら、遅くなってしまってな」
 手にした紙袋を僅かに持ち上げれば、ふうんと頷いた。止めていた足が動き出すと同時に、丸まった目がしょぼくれる。
「伊作こそどうした。こんな時間まで学校にいたのか?」
 とっくに下校時刻は過ぎていた。部活で居残りするならともかく、特にクラブに入ってない伊作なら、とっくに家に着いているころだ。これはまた何かあったのかと横顔を見れば、案の定、伊作は溜息をついた。
「今日はなんだか最悪で」
「どうやらそうらしいな」
「いや、仙蔵が何想像してるか知らないけど、もう、とにかくそれを超えて最悪だから」
「……一体何があったというんだ」
 別に大した想像をしていた訳ではなかったが、流石にそんな言い方をされては気になる。聞けば、伊作の大きな目がいきなり潤んだ。
「あったことはどうでもいいんだ。しょうがないって言ってもいい。ただ、今日じゃなければ……!」
 潤んだ目で搾り出すような声で、伊作が嘆く。留三郎なら共感するなり励ますなりするのだろうが、生憎仙蔵はそんな面倒見の良さは持ち合わせていない。
「で、何があったんだ」
 至極冷静な声で聞いてやれば、伊作は洟をすすった。
「今日、新野先生が教会にお見えになる予定だったんだ。クリスマスのミサの打ち合わせで」
「ほう」
 伊作が教会に通いつめていること、そしてこの前の春から伊作のお目当ての新野先生とやらが医師として病院で勤めるため、その教会には新しく別の神父が来たという話は聞いていた。
「午後4時くらいって話だったから、学校が終わってすぐ行けば、充分間に合う筈だったんだ。保健委員の当番も無い日でさ。久しぶりにお会い出来ると思うとめちゃくちゃ嬉しかったんだけど……」
 成程。日ごろの不運が災いして、下校が遅くなり、会えなくて落ち込んでいる、と。仙蔵はそう合点した。しかし、肝心の教会は、この道の先にある。打ち合わせとやらにどれぐらい時間がかかるものかは知らぬが急げば間に合うかも、とは思うが、制服を着たまま鞄を抱え、とぼとぼと歩きながら、伊作は話を続けた。
「HRが終わったところで先生に呼び止められてさ。なんか、6時間目の体育で怪我をした生徒がいて養護の先生が付き添って病院に行ったから、留守番を頼むって言われて」
「ほう」
「今日に限って、数馬に補習が入っちゃってさ。左近は歯医者だっていうし。おまけにどの部活も試合前で気が立ってるのか、怪我人続出でさ。1年生だけに当番させるのも何だと思ったから、ずっと保健室にいたんだよ。下校時間の5時ちょうどに出れば、打ち合わせを終えて出られる前には着けるかもしれないって思って」
「ふむ」
「まあ怪我人達もひと段落して、下校時間になったから帰ろうと思って後片付けしてたら、保健室にゴキブリが出て、びっくりした伏木蔵が慌てて戸棚にぶつかって。戸棚の上のダンボール箱に入ってた、今は使ってない人体模型がバラバラに飛び散っちゃってさ。……なんとかまた元の箱に片付け直したんだけど、左の眼球だけどうしても見つからなくて。でも1年生をこんなに遅くまで残すのも不味いと思って、もう切り上げて帰ろうとしたら、どこにあったのか、その眼球を乱太郎が踏んづけて、転びそうになって、とっさに掴んだカーテンが思いっきり破けて」
「……」
「まあでもカーテンはどうしようもないから、とにかく帰ろうと鍵をしめて、職員室に鍵を返そうと思ったら、職員室が閉まってて入れなくて。ちょうど玄関に事務員さんがいたから鍵を預けようと思ったら、自分は今から帰るところだから預かれないって言うし」
「マニュアル通りにしか物事に対処出来ない事務員がいる、とは聞いたことがあるな」
「その人かもね。ともかく、保健室の鍵をその辺にほっぽっとく訳にもいかないし、どうしたもんかと思ってたら、会議室から声がしてさ。先生達、会議中だったらしいんだ。これで鍵を返せる、と思ってノックして会議室に入ったら、生徒には聞かせられない会議だったらしくてさ。なんか凄く怒られて」
「そりゃあ災難だったな」
「それでこんなに遅くなっちゃったんだよ……」
 時計を見れば、普通の下校時間より一時間以上も遅い。時刻もだが、それだけトラブルに見舞われて、すっかり心が折れてしまっているのだろう。一縷の望みを託す元気もないようだ。
「もしかしたら、新野先生、今日夜勤かもしれないしさ。そしたらもう当然、病院に向かわれてるだろうし……ああああ、せっかく、久しぶりにお会い出来るチャンスだったのに……!」
 空を向いて一声咆えたかと思うと、伊作はがっくりと肩を落とした。
 普段から不運な目に遭うことが多く、耐性が出来たか大抵のことではめげない伊作が、こんなにしょげ返っているのは珍しい。
「そんなに、その新野先生とやらに会う機会がないのか」
「そりゃもう。先生が教会にいらした頃と比べたら、激減だよ。夏休みに、信者の方のお葬式の時にお見かけして以来かな。もちろんそんな時だったから、ゆっくりお話することなんて出来なくてさ」
「ふむ」
 仙蔵は新野先生という人物に会ったことは無かったが、なんとなくその気配は知っていた。あの土地、おそらく教会にいれば、独特の雰囲気を醸し出すことも。
「会いたいのか」
「そりゃもちろんだよ!」
「会ってどうする」
「いやその……どうってこともないけど」
 伊作の目が大きく瞬いた。新野先生の話になれば、目に生気が戻る。こいつは心底、新野先生に敬慕の念を抱いているのだろう。今の神父とは比べ物にならないくらいに。仙蔵はなんとなく、今の神父に同情した。
「お会いして、元気そうだったらいいなあ、っていうか。病院の話とかお聞きしてみたいし。ああ、そうだ、もし可能なら、進路のこととか、相談に乗って欲しいし……」
「なら諦めるな」
「へ?」
 仙蔵はほんのわずか、鼻をうごめかした。行く道の先の気配を探れば、ある。人の集まる場所、祈りを捧げる場所には、独特の念が籠もりやすい。だが、核となるものがなければ、そうした念もすぐに散らばる。一時しか持続しないことが多い。
 あの者は核になり得る。あの男がそこに居た時、そこは不思議な静けさで満たされていた。だから近づけなかった。いや、この地に、この身が入れぬ場所などない。無理に通ろうと思えば通れる。だが、全身の毛が逆立つようなちりちりする感触が不快だった。
 異邦の神が住まうのか、この身内の土地に。そう考えて戦慄したこともあったが、それは誤りであった。あの男が核として機能しただけだ。現にあの男が去った後、不思議な静けさは消えた。思えばあの男が居つく前からそこに教会はあったが、近づいても戦慄など感じたことなどなかった。
 あの不思議な静けさ。独特の雰囲気。人の身がその矩を超えるか超えないかの境目。危ういところにあった。だからこそ、人が集まる。伊作が魅かれもするのだろう。仙蔵は傍らの友人を振り返った。
「会いたいのなら、急げ。もしかしたら、まだ間に合うかもしれんぞ」
 奴がその場に納まり続けるのであれば、こんなことは言わない。だが、新野先生とやらは、人の側に寄った。人の念ではなく、体を相手にする商売に転じた。人として、人の側にいるというのなら。伊作を傍へやってもいいだろう。それで伊作の笑顔が戻るならば。
「え、でも……」
「いいから走れ、この軟弱者。さっさと行かんとバレーボール部にぶちこんで小平太に鍛えてもらうぞ」
「そ、それはやだ!」
「なら行け。走れ、急げ!」
 仙蔵が思いっきり背中を叩けば、「わわっ!」とつんのめりそうになりながら、伊作が走り出した。その背に向かって、仙蔵が叫ぶ。
「転ぶなよ!」
「わーん!」
 振り返りかけた伊作が、その一声に慌てて前を向く。鞄を抱えて、バランス悪そうに、それでもなんとか走っていく。
 ゆっくりとその背中を見守りつつ歩いていた仙蔵だったが、教会の門に伊作が吸い込まれると、歩みを止めた。
「……成程」
 門をはさんで反対側、路地の暗がりになるべく身を隠すようにして佇む男を見つけた。
 男の姿はほとんど闇に同化している。常人であれば目に留めることはないだろう。
「どうやら、近寄り難いと見える」
 この男は新野先生とやらと違って、完全に人の矩を超えている。こんな物騒な奴が伊作の回りをうろついているかと思うと穏やかでない。この男が近寄れなくなるのなら、教会に新野先生を置くのもいいかもしれないと思った。
「それはそっちも同じじゃないのかな」
 小さく笑いを含んで、男が呟く。同じにされては困ると、仙蔵は再び歩み始めた。教会に近づけば近づくほど、全身の毛がちりちりと逆立つ。言い様の無い戦慄を感じる。ただ、それだけだ。この男と違い、自分はそれにダメージを受けることはない。
「ほう。さすが、この土地を支配するだけのことはある」
 男と教会の間に入れば、男は包帯の下でにやりと微笑んだようだった。今日は退散するよと、踵を返し、歩み去る。男の纏う闇の気配が、黒いコートと重なり合って遠ざかる。
「まったく。厄介な奴だ」
 男の気配が完全に消えると、溜息ともぼやきともつかない呟きがもれた。伊作の笑顔は、人を惹きつける。人ならざる者までも。自分も惹かれている。長く、長く生きていれば、時たまああいう人に会う。どこか懐かしく、ゆかしく、自分を惹きつける者に。
 仙蔵は傍らの建物を見上げた。すっかり日の暮れた空に、地上の光を受けた十字架が緩く光る。肌が粟立ちそうな感覚はそのままだ。
 誰が支配などするものか。
 大またに歩き始める。もし出来るなら、こんな不快な場を残しておかない。いや、今からでも遅くは無い。この戦慄の原因を絶つべきか。しかし。
 しかし。その場を通り過ぎ、明るい商店街へ早足で急ぐ。
 私はただ、見守るだけ。
 そう一人ごちる仙蔵を、木枯らしが追い越していった。
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