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現パロでもないのにバレンタインネタなんて唐突過ぎるかなあと思ってましたが、結構みなさんやってらっしゃるんですね^^;;
なので、細かいことはさておいて。
書いてはみたものの、HTMLで清書するのが面倒というか、バレンタイン数話分をいかにまとめるかというので悩んだので、こっちでアップします。やっぱりインデックスをもっと使いやすくしないとダメだ><
今日は久々知から伊作へ。大丈夫な方は追記からどうぞ。
「伊作先輩」
その日最後の授業が終わって教室を出たところで、不意に呼び止められた。
「あれ、どうしたの」
廊下の片隅に、久々知兵助が佇んでいた。用がなければ、五年生が六年の教室近くに出没する訳がない。何の用かと、僕は久々知の元へ歩み寄った。
「あの、これ。……受け取って下さい」
それは小さな包みだった。忍たまの友くらいの大きさの、豆腐を思わせる白い四角い包み。風呂敷の結び目には、小さな花が添えられていた。
「へえ、福寿草だ。綺麗な黄色だね。……っていうか、これは?」
真っ白な唐木綿に包まれて、さり気なくも花が飾られたその典雅な荷物に心当たりはなく、僕が首を傾げると、久々知は苦笑いした。
「日頃の感謝を込めて。どうぞ、召し上がって下さい」
「え、ってことはチョコレート?僕に!?」
こっくりと頷くと、久々知は改めて、僕の手元に包みを差し出した。反射的に受け取ってしまう。
頬が緩むのを、自分でも止められなかった。うわあ、日頃の感謝を込めて、だって。真面目に委員会活動していると、こんないいこともあるんだ。嬉しいなあ。
「ありがとう、久々知!」
にっこり笑ってお礼を言うと、久々知は、いやあ、と照れたように頭を掻いた。
「みんな甘いものが好きだから、喜ぶと思うよ。本当にありがとう!」
重ねて言うと、何故か久々知の表情が固まった。頭を掻いてた手まで止まる。
「久々知?」
「……あっいえいえ!何でもないですっ!」
慌てたように顔の前で手を振ると、久々知もにっこり笑った。
「どうぞ皆さんで召し上がって下さい。……それじゃ俺は、委員会がありますから」
そそくさと逃げるように去って行く。まあ五年生なら、六年の教室近辺は長居し辛いだろう。
それはともかく。チョコレートをもらえた僕は上機嫌だった。
普段は不運だと言われているし、辛い仕事も多いけど、人に感謝されることも多い。真面目にちゃんと仕事をしてれば、こんな嬉しいこともある。保健委員会を続けてて良かった。
……いや、ちょっと待てよ。僕は長屋に戻りかけていた足を止めた。
確かに保健委員会は不運委員会と呼ばれている。そして僕はその頂点の不運男だ。良い事があった後には、大抵不運な目に合う。となれば、これから何か不運な事が起こるかもしれないぞ。この幸運が台無しになるような悲惨な目に、これから遭わないとも限らない。
そうなる前に、これを医務室まで運んで、みんなで食べてしまおう。
そう決めた僕は、いつもより入念に罠や落とし穴をチェックしながら、医務室へ向かったのだった。