日常のこと、アニメ感想、ネタなど。
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一時は、ちゃんと更新のところに入れようかなーと思ったのですが、やっぱりそれほどのものでもないので、こっちに置いておきます。
なんていうか、美味しいネタなのでもっとちゃんと料理するべきかもしれませんが……裏設定とかついつい考えてたら、もうイヴになっちゃったので、アップしますvv
念のため。
私はキリスト教徒じゃありませんので、知識とか認識とか色々間違いがあったらごめんなさい。m(_)m
Merry Christmas!!
なんていうか、美味しいネタなのでもっとちゃんと料理するべきかもしれませんが……裏設定とかついつい考えてたら、もうイヴになっちゃったので、アップしますvv
念のため。
私はキリスト教徒じゃありませんので、知識とか認識とか色々間違いがあったらごめんなさい。m(_)m
Merry Christmas!!
「今日はありがとう。助かったよ」
「いーえー。こっちこそ、お菓子ご馳走さまでした」
「また来てもいいですか?」
「うん、もちろん!いつでも来たらいいよ。でも今日はもう日が暮れるから。真っ直ぐ帰るんだよ。道草なんかしちゃだめだよ」
「はあい」
「じゃあ伊作さん、さようなら」
「さよなら。気をつけて帰るんだよー」
元々小さな人影が、何度も振り返って手を振りながら、ますます小さくなる。それが角を曲がって見えなくなるまで見送って、伊作が門の中へ入ろうとした時だった。ふと背中が寒くなるような、急に影が差したような気がして振り返った。
「やあ、久し振り」
「……雑渡さん」
そこにいた相手に伊作はにこやかに微笑みかけたが、相手は不気味な風体をしていた。黒のトレンチコートに黒のソフト帽はまだしも、その間にある顔にはびっしりと包帯が巻きつけられていた。真新しいとは言えない包帯の間から、白目がちの右目だけがのぞく。
「今の子たち、よくここに来るの?」
「ええ。今日は飾り付けを色々手伝ってもらってたんです」
「信者なんだ?」
「いいえ。でも友達に誘われて日曜学校に来て以来、教会が気に入ったみたいで」
にこやかな笑みのまま嬉しそうに目を細めて話す伊作を見て、雑渡は、どうかな、と思った。教会というより、そこにいる人に惹かれてのことかもしれない。伊作は不運でいつもろくな目に合っていないが、その穏やかな性格と和やかな雰囲気に惹かれる者は多い。自分もその一人だ。雑渡は緩みそうになる口元まで濃い色のマフラーを引き上げた。
「飾りつけって?」
「もうすぐクリスマスですから。といっても、商店街みたいに派手なことはしないんですけど。ちょっとくらいは気分を盛り上げようかな、なんて」
「ふうん。じゃあ、クリスマスの予定は?……なんて、聞くだけ野暮かな」
「新野先生のミサがあるんです!」
いきなりぱっと顔を輝かせた伊作に、やれやれ、と雑渡は肩をすくめた。
「ミサって、毎週やってるんじゃないの?」
「ええ、でも先生が病院に戻られてからは、別の神父さまがいらっしゃることが多くて。新野先生のミサは本当に久しぶりなんです」
満面の笑みで話す伊作に、雑渡は苦笑を禁じ得ない。この子がこんなに嬉しそうにしているだけで、こちらも幸せな気持ちになるのだから。これもある種の業のようなものなのだろうか。この自分が、子供の笑顔一つで幸せな気分になれるなんて。
「それに、いつものミサとクリスマスのミサは、少し違うんですよ。やっぱり特別な日ですから……あ」
楽しそうに語る伊作が、不意に言葉を切った。雑渡の顔をちらりと見上げると、すみません、と呟いた。
「こんなこと説明しても、つまらないですよね。興味ないって、前に仰ってたし」
「ごめんね、興味なくて」
殊更軽く冗談めかして言えば、項垂れるように俯いてしまった。もうすっかり、さっきまでの嬉しそうな雰囲気はない。どうしたものか、と少しばかり雑渡が困惑していると、いきなり伊作は面を上げた。
「雑渡さん」
「何だい」
意を決したように、真剣にこちらを見上げてくるその懸命な表情を、雑渡は真正面から見下ろした。大きな目の全てが、雑渡に向けられている。
「新野先生にお願いしてみませんか。きっと新野先生なら、雑渡さんを救って下さると思います。力のある方ですから、必ず」
見つめる包帯の下の正体を、伊作はまだちゃんとは理解できていない。ただ、雑渡と接していて、救われない魂がそこにあることだけは感じていた。
「新野先生ならきっと、雑渡さんを助けて下さると思います。雑渡さんの力になって下さいます」
「それで私に、真っ当な、真人間になれと?」
「はい」
雑渡の茶化すような物言いにも負けず、伊作は真っ直ぐに雑渡を見つめ続けた。
「そうすればきっと、こんな日が落ちる頃でなくても、堂々と外を歩けるようになりますよ」
「うーん、じゃあ伊作くん、そうしたら私とデートしてくれる?」
「は?」
意外な単語が飛び出したせいか、伊作から真剣さが抜けた。目と口がぽかんと開いた表情が可愛くて、包帯の下から笑いが漏れる。
「……あのっ!笑い事じゃありませんよ!」
流石に気に障ったのだろう、温厚な伊作にしては珍しく声を荒げた。見れば頬が真っ赤に染まっている。余程怒っているらしい。
「ごめんごめん」
さもありなん。自分に対してあんなに真剣になってくれた彼をおちょくったのだから。しかし謝罪しつつも、少しも悪いとは思っていなかった。包帯に挟まれた右目からそれを読み取った伊作は、ふい、とそっぽを向いた。
「あの」
「うん?」
頬に赤みを残して他所を向いたまま、しかし伊作の声音には意外と真剣さが込められていた。
「デートというか、その、どこへでも行きます。雑渡さんの行きたいところ、どこへでも、お付き合いします。ですから……だからどうか」
再び、真剣な表情が雑渡を見上げた。その真摯な視線を雑渡は受け止める。
「どうか、新野先生に任せて下さいませんか?」
その時、二人の横を自動車が通り過ぎた。ヘッドライトに照らされて、きらきらと光る瞳を、雑渡はこの上なく眩しいもののように感じた。
しかし一瞬だけ。車は騒音を立てて走りすぎ、光が通り抜けた後には、先ほどよりも濃さを増した闇が残された。
「伊作くん」
「はい」
日はもう沈んだらしい。暗がりが広がってゆく中、ともすれば闇に沈んでいきそうになる目の前の人を、白いはずの包帯を、見失わないように、伊作は懸命に見つめた。
「悪いけど、新野先生の世話になるつもりはないんだ」
「……どうしてですか」
「もし、私を救える人がこの世にいるとすれば、君しかいないと思ってる。……あの日、助けてくれたみたいにね」
雑渡がそう告げれば、伊作は息を止めた。元々大きな目が更に見開かれ、代わりに目蓋が呼吸しているかのように何度もまばたきを繰り返す。
「でも、僕は」
うろたえ、困惑しきった声。それを契機に、雑渡の顔から視線が外れた。俯いて、何かを探すように視線は地を彷徨った後、閉じた目蓋に遮られる。
「僕にはまだ、何の力もなくて。しかもその道に進むとは、まだ決められなくて……回りはみんな、医者になれって言うし、僕は、まだ」
「うん。それでいいんだ」
それはとても柔らかくて優しい声だったけれども、伊作は弾かれたように顔を上げた。
「私もまだ当分、この稼業をやめるつもりはないんだ。せっかく気にかけてくれてるのに、悪いんだけど、ね」
「雑渡さん……」
夕闇に溶けそうな黒いコートを追いかけて、一歩踏み出そうとした伊作を、包帯越しの柔らかな笑みがそっと押し戻した。
「じゃあね。……楽しいクリスマスを」
立ち尽くす伊作に踵を返して、雑渡はその場を歩み去った。すっかり日が暮れて、もう視界には何も映らないだろうに。それでも背中には、子供たちを見送っていたのと同じであろう、律儀な視線を感じる。
伊作くん、君ねえ。
そんな背中を温かく感じながら、雑渡は小さく笑みをもらす。
君はそれでも神に仕える身なんだから。こんな吸血鬼くずれを救おうなんて、甘いこと考えてちゃいけないよ。
角を曲がってもと来た道を振り返れば、暗い夜道に明るい光の帯が出来ていた。ばたんと音がして、帯も消える。今、伊作が教会の中に入ったらしい。
君にはその温かな光こそ似つかわしいのだから。
口の中でそう呟くと、雑渡はその闇に身を沈ませた。
「いーえー。こっちこそ、お菓子ご馳走さまでした」
「また来てもいいですか?」
「うん、もちろん!いつでも来たらいいよ。でも今日はもう日が暮れるから。真っ直ぐ帰るんだよ。道草なんかしちゃだめだよ」
「はあい」
「じゃあ伊作さん、さようなら」
「さよなら。気をつけて帰るんだよー」
元々小さな人影が、何度も振り返って手を振りながら、ますます小さくなる。それが角を曲がって見えなくなるまで見送って、伊作が門の中へ入ろうとした時だった。ふと背中が寒くなるような、急に影が差したような気がして振り返った。
「やあ、久し振り」
「……雑渡さん」
そこにいた相手に伊作はにこやかに微笑みかけたが、相手は不気味な風体をしていた。黒のトレンチコートに黒のソフト帽はまだしも、その間にある顔にはびっしりと包帯が巻きつけられていた。真新しいとは言えない包帯の間から、白目がちの右目だけがのぞく。
「今の子たち、よくここに来るの?」
「ええ。今日は飾り付けを色々手伝ってもらってたんです」
「信者なんだ?」
「いいえ。でも友達に誘われて日曜学校に来て以来、教会が気に入ったみたいで」
にこやかな笑みのまま嬉しそうに目を細めて話す伊作を見て、雑渡は、どうかな、と思った。教会というより、そこにいる人に惹かれてのことかもしれない。伊作は不運でいつもろくな目に合っていないが、その穏やかな性格と和やかな雰囲気に惹かれる者は多い。自分もその一人だ。雑渡は緩みそうになる口元まで濃い色のマフラーを引き上げた。
「飾りつけって?」
「もうすぐクリスマスですから。といっても、商店街みたいに派手なことはしないんですけど。ちょっとくらいは気分を盛り上げようかな、なんて」
「ふうん。じゃあ、クリスマスの予定は?……なんて、聞くだけ野暮かな」
「新野先生のミサがあるんです!」
いきなりぱっと顔を輝かせた伊作に、やれやれ、と雑渡は肩をすくめた。
「ミサって、毎週やってるんじゃないの?」
「ええ、でも先生が病院に戻られてからは、別の神父さまがいらっしゃることが多くて。新野先生のミサは本当に久しぶりなんです」
満面の笑みで話す伊作に、雑渡は苦笑を禁じ得ない。この子がこんなに嬉しそうにしているだけで、こちらも幸せな気持ちになるのだから。これもある種の業のようなものなのだろうか。この自分が、子供の笑顔一つで幸せな気分になれるなんて。
「それに、いつものミサとクリスマスのミサは、少し違うんですよ。やっぱり特別な日ですから……あ」
楽しそうに語る伊作が、不意に言葉を切った。雑渡の顔をちらりと見上げると、すみません、と呟いた。
「こんなこと説明しても、つまらないですよね。興味ないって、前に仰ってたし」
「ごめんね、興味なくて」
殊更軽く冗談めかして言えば、項垂れるように俯いてしまった。もうすっかり、さっきまでの嬉しそうな雰囲気はない。どうしたものか、と少しばかり雑渡が困惑していると、いきなり伊作は面を上げた。
「雑渡さん」
「何だい」
意を決したように、真剣にこちらを見上げてくるその懸命な表情を、雑渡は真正面から見下ろした。大きな目の全てが、雑渡に向けられている。
「新野先生にお願いしてみませんか。きっと新野先生なら、雑渡さんを救って下さると思います。力のある方ですから、必ず」
見つめる包帯の下の正体を、伊作はまだちゃんとは理解できていない。ただ、雑渡と接していて、救われない魂がそこにあることだけは感じていた。
「新野先生ならきっと、雑渡さんを助けて下さると思います。雑渡さんの力になって下さいます」
「それで私に、真っ当な、真人間になれと?」
「はい」
雑渡の茶化すような物言いにも負けず、伊作は真っ直ぐに雑渡を見つめ続けた。
「そうすればきっと、こんな日が落ちる頃でなくても、堂々と外を歩けるようになりますよ」
「うーん、じゃあ伊作くん、そうしたら私とデートしてくれる?」
「は?」
意外な単語が飛び出したせいか、伊作から真剣さが抜けた。目と口がぽかんと開いた表情が可愛くて、包帯の下から笑いが漏れる。
「……あのっ!笑い事じゃありませんよ!」
流石に気に障ったのだろう、温厚な伊作にしては珍しく声を荒げた。見れば頬が真っ赤に染まっている。余程怒っているらしい。
「ごめんごめん」
さもありなん。自分に対してあんなに真剣になってくれた彼をおちょくったのだから。しかし謝罪しつつも、少しも悪いとは思っていなかった。包帯に挟まれた右目からそれを読み取った伊作は、ふい、とそっぽを向いた。
「あの」
「うん?」
頬に赤みを残して他所を向いたまま、しかし伊作の声音には意外と真剣さが込められていた。
「デートというか、その、どこへでも行きます。雑渡さんの行きたいところ、どこへでも、お付き合いします。ですから……だからどうか」
再び、真剣な表情が雑渡を見上げた。その真摯な視線を雑渡は受け止める。
「どうか、新野先生に任せて下さいませんか?」
その時、二人の横を自動車が通り過ぎた。ヘッドライトに照らされて、きらきらと光る瞳を、雑渡はこの上なく眩しいもののように感じた。
しかし一瞬だけ。車は騒音を立てて走りすぎ、光が通り抜けた後には、先ほどよりも濃さを増した闇が残された。
「伊作くん」
「はい」
日はもう沈んだらしい。暗がりが広がってゆく中、ともすれば闇に沈んでいきそうになる目の前の人を、白いはずの包帯を、見失わないように、伊作は懸命に見つめた。
「悪いけど、新野先生の世話になるつもりはないんだ」
「……どうしてですか」
「もし、私を救える人がこの世にいるとすれば、君しかいないと思ってる。……あの日、助けてくれたみたいにね」
雑渡がそう告げれば、伊作は息を止めた。元々大きな目が更に見開かれ、代わりに目蓋が呼吸しているかのように何度もまばたきを繰り返す。
「でも、僕は」
うろたえ、困惑しきった声。それを契機に、雑渡の顔から視線が外れた。俯いて、何かを探すように視線は地を彷徨った後、閉じた目蓋に遮られる。
「僕にはまだ、何の力もなくて。しかもその道に進むとは、まだ決められなくて……回りはみんな、医者になれって言うし、僕は、まだ」
「うん。それでいいんだ」
それはとても柔らかくて優しい声だったけれども、伊作は弾かれたように顔を上げた。
「私もまだ当分、この稼業をやめるつもりはないんだ。せっかく気にかけてくれてるのに、悪いんだけど、ね」
「雑渡さん……」
夕闇に溶けそうな黒いコートを追いかけて、一歩踏み出そうとした伊作を、包帯越しの柔らかな笑みがそっと押し戻した。
「じゃあね。……楽しいクリスマスを」
立ち尽くす伊作に踵を返して、雑渡はその場を歩み去った。すっかり日が暮れて、もう視界には何も映らないだろうに。それでも背中には、子供たちを見送っていたのと同じであろう、律儀な視線を感じる。
伊作くん、君ねえ。
そんな背中を温かく感じながら、雑渡は小さく笑みをもらす。
君はそれでも神に仕える身なんだから。こんな吸血鬼くずれを救おうなんて、甘いこと考えてちゃいけないよ。
角を曲がってもと来た道を振り返れば、暗い夜道に明るい光の帯が出来ていた。ばたんと音がして、帯も消える。今、伊作が教会の中に入ったらしい。
君にはその温かな光こそ似つかわしいのだから。
口の中でそう呟くと、雑渡はその闇に身を沈ませた。
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