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日常のこと、アニメ感想、ネタなど。
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ええと、今回の日記のタイトルを「敗北宣言」にしようかと思ったのですが、よく見たら去年の今頃も「敗北宣言」と銘打った日記を書いているので、やめておきます。
毎年、今ぐらいの時期に、負けてるんですね、私。
何に?……自分に、かな^^;;

今回は、去年のクリスマスネタを引っ張りだしてきて、何か書こうと思ってたんですよ。
が、しかし。書きあがらないままクリスマスが終わり。
クリスマスネタで何か書こうと思い立ったのは今月入ってすぐ位なんだから、その時書けてれば良かったんだけどね。計画性のないのが恨めしい……(ノД`)・゜・。

というわけで、クリスマス転じて初詣の話です。
本当に、キリスト教に関する知識がないもんですから適当に書いてますが、キリスト教の信者の人って、神社にお参りしてもいいもんなんですかね?偶像崇拝ってことになっちゃう??
普段無宗教で過ごしている、というか八百万の神を信奉してる身としては、その辺の禁忌ってよく分からないのです……。関係者の方、お気を悪くなされたらごめんなさい。m(_)m

それでは、追記より、初詣ネタをどうぞ。

これまでに拍手くださったみなさま、どうもありがとうございました!凄く嬉しかったですvv


 境内は人でごった返していた。後から後から寄せてくる人の波。俺は邪魔にならないよう、鳥居にぴったりと張り付いた。その俺の目の前を通り、神社に入っていく人達。みなぴっちりコートを着込んで、マフラーや手袋で防寒対策している。中にはミニスカのお姉さんもいるが、ロングブーツもおしゃれというより寒さ対策の一環だろう。こんなに人が大勢いても、真冬の真夜中はさすがに冷える。
 あいつはちゃんとここにたどり着けるんだろうか。同級生何人かと待ち合わせしているのだが、俺が心配してるのは伊作のことだった。
 善法寺伊作。俺の幼なじみというか腐れ縁というか。家が近所で母親同士が仲が良かったため、物心付いた頃から近くにいる。こいつは勉強は出来るし運動神経も悪くない筈なのに、どこかどんくさい。この頃は不運な目に巻き込まれることも多い。おかげで目が離せない。
 投光機の光やら屋台の灯りに照らされた参道を見渡すと、見慣れた髪色がひょこひょこ動いているのが見えた。染めてる訳でもないのに、明るい色の髪。
「よお」
 軽く手を挙げれば、伊作は人の波をはずれて、俺の方へ駆けてきた。
「良かったー、留三郎に会えた!」
 ダッフルコートとマフラーで防寒しているが、素手だった。その手に握られてるのは、去年の今頃に機種変更した携帯。
「長次からメールあってさ。この人混みだから、とりあえずお参り済ませてから落ち合おうって。あ、でも小平太は一緒らしいよ」
「おう。俺のとこにも仙蔵からメールがあった」
「なんて?」
「寒いし面倒だから、行かないって」
「そっかー」
 会話しながら俺たちは鳥居をはずれて、人波に潜り込んだ。そのままのろのろと、参道を流されるに任せる。
「仙蔵が来ない、ってことは、文次郎も来ないよね」
「多分な」
「仲いいよね、あの二人。っていうかさ、仙蔵って、神社とかお寺とか、あんまり好きじゃないよね」
「そういうお前はどうなんだよ」
「何が?」
「キリスト教徒のくせに、二年参りなんか来ていいのか?」
 問いかければ、伊作は軽く首を傾げた。
「うーん、僕の場合、キリスト教徒って言っていいのかどうか疑問だしさ」
「そうなのか」
「うん、だってまだ洗礼も受けてないし」
「ふうん、そんなもんか」
「ていうかさ。なんだかんだ言って、毎年この神社に初詣に来てる訳じゃない?僕にとっては毎年恒例な訳で、神様がどうのこうのっていう以前に、行事として欠かせないっていうかさ」
 えへへ、なんて笑う顔を見るに、どうやら伊作は神社に初詣に来るってことの意味を、あまり深くは考えてないらしい。いいのか、と思いつつ、多分毎年来てるその半分くらいは俺も一緒かもしれない。
 聞くところによれば、伊作のうちは浄土真宗らしい。つっても普段はうちと同じく、ほぼ無宗教だ。
 つまり伊作の両親はキリスト教徒でも何でもなく、なのにいきなりキリスト教に傾倒しちまった息子をどうしたもんかと扱いかねているらしい。だから洗礼を受けるのにも難色を示しているんだとか。伊作は不満たらたらだったが、新野先生が、ご両親が気が進まないというなら無理に洗礼しなくてもいいと言ってくれたとかなんとかで、いまだに教会通いを続けている。
 あんなに毎日のように通い続けて、庭掃除だの何だの神父さんの細かい仕事だの手伝い続けてるってのに、信者とは言い切れないのか。それもなんだかなあと思いつつ横顔を見れば、「あ、でも!」と伊作が手を叩いた。
「神学部受かったら、洗礼受けてもいいって、父さんが言ってた!」
「へ、神学部?」
「うん。でもさ、聞いてよー、うちの親ひどいんだよ」
「何が」
 一人っ子で基本的に可愛がられてるというか、善法寺家はうちと違って、友達みたいに仲の良い親子だと思ってただけに、ひどい発言は意外だった。まじまじと唇を尖らせた伊作を見る。
「神学部ってさ、ふつう、私大にしかないじゃない?」
「……まあ、そうだな」
「で、神学部なんて出たところで就職出来るかどうか怪しいのに、経済的に私大なんて行かせられない。どうしても神学部に行きたいんなら、K大にしろ、K大なら神学部でもハクが付くから許す、って!」
「K大ー!?」
 自分の口から思わぬ素っ頓狂な声が出た。全国レベルで見ても、私大の最難関だ。日本で一番偏差値の高い大学っつってもいい。
「そりゃまた大きく出たもんだな」
「本当だよー、無茶言っちゃってさ。それで、医学部ならどこでも行けって言うんだよ。医者になれば食いっぱぐれないだろうから、国公立でも私大でも好きなとこに行けって」
「へえ」
 確かに、医者の方が就職は安定してるだろうけど、そういういうことじゃないんだろうな。伊作の親父さんとしては、高いハードルを設けて、息子がどれだけ本気か試しているのかもしれない。
「で、お前はどうすんだよ」
「どうするって……」
「お前の成績で、K大なんて手え届くのか?」
 ストレートに聞けば、伊作はちょっと気を悪くしたみたいだった。眉根が寄る。
「そりゃK大医学部って言ったら雲の上だけどさ。神学部だったら、今から死ぬ気で努力すれば、まあなんとか、見込みがないこともないかもしれないだろうけれどもって、進路の先生が言ってたし」
「なんだその歯切れの悪い物言いは。それ絶対、安藤先生だろ」
「……当たり」
「そりゃあれだ、お前がまだ二年だから、進学実績のために、希望を捨てさせちゃあマズいと思ってそう言ってんだろ」
「そう、なのかなあ」
 思い当たる節があるのか、伊作の物言いも歯切れが悪い。考え込みそうな気配に、俺は明るい口調を投げかけた。
「いいじゃねーか、医者になりたい、ってのは伊作の小学校の頃からの夢だったし、K大なんてやめて、地元国立の医学部行けば。学費も安上がりでいいぞ」
「……留三郎は工学部だっけ?」
「おう。工学部建築学科志望」
「建築はわかんないけど、留三郎は昔から、物作るの得意だったよね。きっと向いてるよ」
 にこ、と笑った顔が向けられて、俺は、何となく決めた自分の進路選択が、そう間違っちゃいないのだという気がしてきた。
「つーかさ、伊作、問題は、死ぬ気で努力する気がお前にあんのかってことだろ。そんなにまでして神学部に行きたいのか?」
「それは……よく、分からない」
 ゆっくりのろのろだが、人の列は進んでいる。足を止めてしまった伊作に後ろのおばあちゃんがぶつかりそうになって、俺は伊作の肩を抱くようにして歩かせた。
「悩んでるのか?」
「うん。……別に、神父になりたいとか思ってる訳じゃなくて、ただ、神様について勉強したいと思っててさ」
「つくづくはまってんだな、キリスト教に」
「はまってるっていうかさ、なんていうか。ちゃんといろいろ勉強して、いろいろ出来るようになって、それで僕が神父になることで、救われる人がいたらいいなっていうか……思い上がり、なんだろうけど」
 そう言う伊作は少し寂しそうに笑って、俺は胸を突かれた。伊作が救いたいと思って、手が届かないような人がいるのか、あの教会のまわりに。新野先生の次にきた神父ってのは何やってんだよ。そういうのを救うのが神父の仕事だろうに。
 伊作は昔っから、怪我した人や困ってる人を見過ごせない奴だった。それでどれだけいらない苦労をしてきたことか。傍から見ると馬鹿みたいだろうが、でもそれが伊作だから、伊作はそういう奴だから、俺も伊作に付き合って、損な目を見たりしてきた。
 でももちろん、ただの高校生に出来ることには限界がある。だから伊作は医者を目指してたんだろうが、神父になりたいって気持ちも、そこから続いていたものなのかもしれない。
 それなら、神学部に行きたいってのも、かなり本気なのか。医者になる夢を捨ててもいいくらいに。
「あ、でも、K大行くとなったら、うちからは通えないから、下宿かな。アパート借りて一人暮らしとか。ちょっと憧れるかも」
 いいよね、一人暮らし。繰り返しながら、伊作はにっこり笑ってみせた。
「お前に一人暮らしなんて出来んのかー?」
 ちょっと深刻になった雰囲気を変えようとした伊作に乗って、からかって言ってやれば、伊作はちゃんと食いついてきた。
「出来るよ!料理とか結構得意なんだよ。カレーとか作れるし!」
「カレーなんか自慢できるうちに入るかよ」
「じゃあ留三郎は何が出来るってんだよ」
「……きゅうりのサラダ、かな」
「五年生の時だっけ、家庭科で作ったよね。懐かしー」
 ぷっと吹き出してから、あはは、と声を立てて笑った。憂い顔はどこかへ飛んで、俺も心おきなく笑う。
「なんかさ、二人でいれば完璧なんじゃない。カレーライスときゅうりのサラダ。献立としてありだよ。留三郎、僕が一人暮らし始めたら遊びにおいでよ。歓迎するよ」
「だから一人暮らし出来んのかよ、って。寝起き最悪のくせに」
「だからー、……あっ、そろそろ拝殿だよ」
 いつの間にか列はそんなところまで進んでいた。俺も伊作も財布を探って五円玉を出すと、賽銭箱に投げ込み、柏手を打った。
 手を合わせて頭を垂れてみるものの、神学部、医学部、K大と一人暮らし。医者と神父と珍しく憂えた表情に頭がぐるぐるして、何を拝めばいいのかよく分からない。
 参拝が終われば、境内は少しは空いていた。破魔矢やおみくじの列を避けて、端の方を歩く。
「ふー、凄い人ごみだったね」
「でもこれから、長次と小平太探して参道まで戻るんだぞ」
「そうだね。……そういえば二人とも、どこにいるのかな。電話してみようか」
 言いながら伊作は携帯を出した。画面に気を取られて足下がおそろかになったんだろう、こういうところがどんくさい。氷りかけた水たまりにもろに足を突っ込んだ。
「うわっ、冷たっ!」
「……伊作!」
 その時、ぱーんと大きな音が鳴り響き、頭上に花火が舞った。
「うわー、すごーい」
「きれーい」
 周りの人がみんな空を見上げる中、俺は転びそうになった伊作を後ろから抱えていた。
 ぱーん、ぱーんと何度も音が鳴り響く。ざわめきや歓声が上がるけれども、俺は伊作を抱えて夜空を見上げることなんか出来ない。十二時ちょうどを告げる新年の花火を見損なった。こいつといると本当に不運が移る。俺にまでろくなことがない。
 だけど。
「……行くなよ」
「へ?」
 羽交い締めにするように後ろから抱えて、ふわふわの髪が鼻をくすぐる。ちょっと長めのくせっ毛は、昔から変わらない。細くてこしのない、色の薄い髪。この髪と目鼻立ちのくっきりした顔のせいで、幼稚園の頃はよく外国人に間違えられたよな。留三郎の髪は真っ黒でいいなあ、って、よく俺の髪を引っ張ってた。
 小学校も中学校も一緒だった。クラスは違っても家が近くて。寝起きの悪いお前を家から引っ張りだして学校へ連れてくのは俺の役目だった。休み中も宿題を見せあったりして、お互いの家族旅行でもなければ一週間と離れたこと無かったじゃねえか。
 物心つく前から、当たり前のように近くにいた。もともとご近所さんだった母親同士が、予定日が近いことで意気投合して仲良くなったって聞く。俺たちはきっと、生まれる前から傍にいたんだ。お前だって言ってただろう、二人でいれば完璧だって。なのに、俺をおいて遠くで一人暮らしかよ。
 ふざけんな。
 あり得ねえだろそんなの。
「ここにいろよ」
 ここに、この町に、俺の手と目が届くところに。そしたらいつでも助けてやる。俺が守ってやる。お前が不運で辛い思いをしてる時にも、いつだって傍にいてやれる。
 キリスト教にはまってても、新野先生に心酔しててもいい。彼女作っても、嫁さんもらっても、何でもいいから。医者になっても神父になっても、何だっていいから。
 俺の近くにいろよ。
『てめえ、伊作に惚れてんのか?』
 些細なことで伊作にちょっかいを出してきた文次郎と喧嘩になった時、文次郎に言われた台詞。何かというと伊作をかばおうとする俺をからかって言った台詞だが、その後文次郎は二週間ほどひかない腫れを頬に作った。
 あの時の台詞がまた脳裏によみがえる。
 俺は伊作に惚れてるのか。この気持ちは恋なのか。
「ふざけんな。あり得ねえだろそんなの」
 ふわふわの髪がどうにも気持ちよくて、俺は更に引き寄せて髪に顔を埋めた。
 俺はただ、こいつの傍にいたいだけなんだ。
「……あのさ、留三郎」
 はあ、と伊作の吐く息はやけに白かった。
「さっきから何となくお酒臭いんだけど……もしかして、酔ってる?」
「あー、そうかもな」
「そうかもな、じゃないよ!何で?どこで何飲んだの!?」
 伊作が振り返ろうとするから、俺は手を離した。意外と真剣な顔で、伊作は俺を睨みつけてくる。
「伊作が来る前、参道のとこで、寒そうだな、これ飲んで温まれ、つって御神酒渡されてさ。返すのもなんだし、寒かったし」
「寒かったし、じゃないよもー!」
 ぺしりと、伊作は俺の頭をはたいた。マジに頭が揺れて、ひでえと泣き言を漏らしても、伊作は睨みつけるのをやめない。保健委員として許せないのかもしれない。
「留三郎って老け顔だから、未成年に見えなかったのかな」
「でも俺に渡してきたの、竹谷んとこの親父さんだぜ。俺が未成年だって知ってるはずだよなあ」
「……未成年にお酒飲ませちゃ駄目だってばー!」
 伊作の叫びもむなしく、夜空に花火が散って、ぱーんと景気のいい音が鳴った。
「あ、いたいた、伊作ー!とめさぶろー!」
 大きく手を振って人混みの中を駆けてくるのは、小平太。その後ろから、のっそり人を避けつつ長次が歩いてくる。
「あけましておめでとう!」
 小平太は襲いかからんばかりに伊作に抱きつくと、大声で叫んだ。
「ち、近い小平太、うるさい、っていうか酒臭い?」
「そこで竹谷のおやっさんに御神酒振る舞われたんだ、なあ長次!」
 見れば頷く長次の頬がほんのり赤い。
「いさっくんももらいに行こー!」
「だから未成年の飲酒は駄目なんだってばー!」
 しかし小平太にヘッドロックをかけられては、伊作にはずせる筈もない。抵抗むなしく、ずるずる引きずられていく。
 俺と長次は目を見交わすと、お互いににんまりと笑顔になり、「あけましておめでとう」と言った。

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